人権擁護法案④

さて、前回は一見差別とは無縁の様なこの日本も、400年以上差別問題を解決出来ないでいると言う事と、人権擁護法案はそういう意味で存在意義がある法案じゃないだろうか?と言う事を書きました。
それでは今回の人権擁護法と言う物は、本当に被差別者の方々の助けになるのか?と言う事についてと、私の最終的な意見を書きますね。

人権擁護委員が稼働し始めると、差別問題を取り締まるだけではなく、裁判の援助もしてくれます。
被差別者が裁判に訴えたくても経済的に困難な場合、全額ではないですが資金を援助、弁護士の紹介、裁判へ専門家の派遣も行うそうです。
これは差別問題解消には大きな前進だと言えます。
裁判まで行かなくても、差別者と、被差別者との調停、勧告も当然行う訳ですが、以前の様に被差別者だけの訴えと比べると、遙かに強力なのは言うまでもありません。

証拠集めも、被差別者だけが独力で行うのに対して、調査員が行ってくれるのですから裁判に有効な調査を的確に行う事が出来るでしょう。
我々も含めて、裁判というものは何処か現実離れした存在で、どう言った証拠をどの様に提出すれば有効なのかが分かりにくい物です。かと言って弁護士に相談するにも有料(平均的に30分5000円)ですから、そうそう気楽に頼る事も出来ません。
それに対して、各都道府県に出来る人権委員の窓口は無料ですから、簡単に相談祈って貰えます。
経済的にも、司法的知識にも乏しい状況で、周囲の人々も協力してくれない人々が、ようやく正当な手段で世の中に訴える方法が確立される訳ですから、そう考えると、この法は画期的とも言えます。

それに、被差別者と書いていますが、昨日書いた様な特殊な経緯を持つ人々以外の人も差別問題とされていないだけで、公平な扱いを受けられない事は良くありますが、これらの問題も差別問題として訴える事が出来る事を忘れてはいけません。
女性差別、年齢差別なども相談出来るのです。そして裁判を起こさないまでも調査依頼、調停依頼も行える訳ですからそういう観点から見ても有り難い存在と言えるのではないでしょうか?
男女雇用均等法は施行されて随分立ちますが、職場での現状は平等とは程遠い物です。
そうした問題を、一女性社員が訴えても聞き入れられる可能性は皆無だと言えます。そうした問題にも堂々とメスを入れられる訳です。
何でも訴えればいいものではないのは、訴訟大国アメリカを見ても分る話ですが、アメリカは少なくとも日本より司法制度というものを市民が使いこなしているとも言えます。
非常に訴えづらく司法が万人に利用されないまま事態がズルズルと続いてしまうのよりは遙かにマシです。
ストーカーに付け狙われて警察に相談しても、無視されるかタライ回し、ようやく相談に乗ってくれても本格的な調書を取るのを後回しにされて数日後にストーカーに刺し殺されてしまう・・・・こんな事件が実際に起きていますが、これが有力者の家族ならどうでしょうか?間違いなく訴えたその日から警察が警戒に当たってくれます。

しかしこれで警察を訴えた所で、一市民に勝ち目など有りません。それに対して公的機関が公的機関を訴えるとなれば世間の耳目を集める訳ですから、ズルズルと対応を引き延ばし闇に葬る事も出来ずらくなります。これなど我々日本人全員に大きく拘わってくる深刻な問題であり、無関心を決め込んでも良い問題ではありません。


まあ、そういっても実際人権擁護委員会が創立されたからと言って、全て順風満帆に事が進むとは考えられません。当然様々な問題が噴出するでしょう。中には行きすぎた処分が大きな問題になるかもしれません。

反対派の人が良く掲げる問題として、雇用主が従業員を解雇する時、人種などを理由として行ってはならないとする一文です。確かに正しい事を言っているのですが、経営が芳しくなければ会社は社員をクビにする事は当然あります。
しかし誰をクビにするかの問題になった時、人種等関係なく一番貢献度が低い人をクビにした所、偶々それが人種の違う人だった場合、差別の意識などまるで無かったのに差別問題にされてしまう恐れがあります。
また、それを恐れて懐古される人が他の人になってしまう恐れも出てきます。
こうした時、人種の違う社員はクビにされにくい特権を持つ事になってしまい、結果的に雇用者や他の従業員が被差別者になってしまう可能性があると言う事です。


確かにそういう危険性はあります。


しかし、従業員をクビにする時、どうした事情でクビにするのか、ちゃんと資料などを示して説明を行い納得して貰うというのは雇用者の義務でもあります。それを面倒くさがり行わないのは単なる怠慢だし、横暴な行為です。


それを訴えられるのは当然の事だと言えるのではないでしょうか?


「ちゃんと説明してもヒガミ根性で訴えられたらどうするんだ?」という人も居るでしょうが、そしたら人権擁護委員が調査に訪れた時にちゃんと説明を行い、理解して貰う様に努力すれば良いだけの話です。

それでも分って貰えずに、罰則がかけられた場合は裁判に訴える事も出来ますしね。
まあ、そもそも業績不振で従業員を解雇しようと言うのですから、そんな余分な金が有るとも思えませんが・・・・・・それでもクビにされる従業員よりも経済的に恵まれている可能性が高いのは考えるまでもない話で、少しでも平等に近づけるにはどちらを行政は助けるべきか考えるまでもないでしょう。

人を雇用するという人は、その人の人生をも左右するという事を自覚し、真剣に対処しなければならない義務があります。
都合の良い時は深く考えもせずに雇い入れ、都合が悪くなったらお払い箱で、文句など聞きもしない。そんないい加減な会社が多いのも事実なのです。
しかも、民族的に少数派の人々、朝鮮・韓国系、部落の人々は多数派の日本人より就職に苦労するのは紛れもない事実です。(女性もね)
そして、そうした人々が真っ先にクビにされるのもまた事実で、それを是正する手段は今の所実質的に存在しません。


こうした現状を放置してまで、人権擁護法が悪法になる可能性が高いと決めつけ反対する必要があるのでしょうか?


また、委員に外国籍の人がなる可能性があるとして問題視する人も居ます。
もっと直接的に書けば、在日朝鮮・韓国系の人々が成るという事を警戒しているようです。これを許せば北朝鮮に対する経済制裁を唱える事も規制される可能性があるという訳です。
私が条文を読んだ限り、この法律は日本国内で生活する人が、日本国内で生活する人に対して行う行為を規制する物であって、北朝鮮に対する経済制裁を要請する訴えに有効かどうか疑問なんですが・・・・「在日朝鮮系も同罪じゃ!!」とか書けば話は別ですけどね(笑
仮に、こうした物にまで規制をかけ始めれば、暴走と言えますからその時になって反対なり是正運動を始めればいいと思うんですけどね・・・マスコミも無視する事はないでしょう。


ネットの世界も規制される恐れがあるという人も居ますが、本当に主張したい内容であるなら、規制されて閉鎖されれば別のサイトを作れば良いだけだし、海外ブロバイダーでサイトスペースを確保する手段もあります。
まあ、2万人程度の数で、ネット中を規制するのは不可能に近いと思いますけどね・・・警察ですら殆ど取り締まれていないのが実状ですし・・・厳しく取り締まっても反感を買うだけですからね・・


人数の話が出ましたが、秘密警察だ!ゲシュタポだ!特効警察だ!と私が叫ぶ気になれない原因の一つがこの2万人という数にもあります。


2万人前後という人数も反対サイトではもの凄い数と言われています。確かにいきなり2万人と聞くと凄い数に思えますが、2万人程度って、この日本でそんなに驚く数でしょうか?一寸した地方の街でも4〜5万人は住んでるんですけどね・・・こで全国を取り締まるんですよ?

では、具体的に見てみると48都道府県で人口に応じて多少のバラツキはあるのでしょうが、平均して416人前後が派遣される事になります。
人口にしたら1億2千万人、中でも対象にならないであろう15歳以下の子供の人口を引くと約1億人で、これを2万人で割ると5000人に対して1人です。(警察官は一人で五百人程度)
被差別者ですら、差別者になる可能性も考えれば、逆にこの数はあまりにも少ない様にも思えるんですけどね・・・・。更に警察官などを見ても分りますが、警察官と言っても事務を行う人も居る訳で、直接取り締まる人の数は更に少ない事になります。法案を見ても委員の教育育成も良いんで行うと言う事になっているわけですから、実質1万5千人程度しか稼働出来ないんじゃないかな?


これで秘密警察の様な厳しい取り締まりが可能ですか?


ちょっと被害妄想が過ぎる様な気がするんですけどね・・・・・・・・・・。
つまりネットのサイトを一つ一つ監視して、ちょっとでも差別的な表現が有れば取り締まり、助長するようなサイトが有ればプロバイダーに圧力をかけて閉鎖させるなんてまねが出来る訳がないのは子供にだって分る話だと思うんですけどね・・・・・・。
ましてや、出版・放送業界全体に圧力をかけるなど、業界も不服として裁判に訴える可能性が高く、そんな事に人数を避けるだけの余裕など無いと言えるでしょう。


まあ、ミセシメ的に酷いサイトを取り締まる事はあるかもしれませんけどね・・・・・


委員自体を取り締まる機関が存在しないというサイトもあるようですが、それは大嘘です。
先にも書きましたが委員の処分が不服なら、裁判に訴える事が出来ます。裁判所でその処分が不当だと言う判決が出たら委員はその処分を取り下げなければ成りません。また、委員の捜査自体が基本的人権に触れると考えたら、その時点で裁判に訴える事すら可能です。
委員には絶大な権限が与えられているような事を反対派サイトでは書き立てていますが、先にも書いたように個人経営の会社だけでなく、大会社、自治体や行政機関にすら差別者はいる事を考えると、委員はかなり苦しい戦いを挑む必要すら有ると言えます。

また、最初にどんな人間がどの様な基準で選ばれるかがよく分らないのも問題という事ですが、仮に在日朝鮮・韓国系の人が採用されるにしても委員の存在意義から考えても当然とも言えますし、その比率が行きすぎないように監視すればいいだけの話だと言えます。
人権擁護委員は女性の権利問題も真剣に考えているようで、5人の人権委員も2人以上は女性になるように配慮されており、朝鮮・韓国系の人ばかりが委員になるとも思えませんけどね・・・・


まあ、仮にそうなったとしても、それから騒げば十分に間に合う話ですよ。


先にも書きましたが、民主主義はそれが出来る社会ですし、其れを今現在行なっていないのは日本人が怠慢なだけです。人権擁護委員がその様な暴走を始めた所で、委員に従い差別と言われる行為を一時中止すれば、罰金も個人名公表も出来ないんですから、社会が正常化してから行えば済む話です。
以上のような理由で、人権擁護法人権擁護委員が実際どの様な活動をするかは見てみないと分りませんが、差別問題に日の光を当てる事が出来る画期的な法案だと言えても、今反対するべき法案とも思えません。
人権委員がたった5人しかいない事や、情報公開の基準をもっと深い所まで適用させる必要性は感じますけど、それは稼働し始めてからでもいい話ですしね。

その様な訳で私は静観の姿勢を崩すつもりにもなれません。
危険性があると言うだけで、それも過剰すぎる反応で反対運動をするのは感心出来ませんしね。


もっと冷静に見る必要があるのではないでしょうか?


発言の自由、表現の自由というものは確かに保証されるべきものですが、人を不快にする為の表現を野放しにする事が、自由を守る事とは違うでしょう。
「人の嫌がる事は行わない」という当たり前の常識は守るべきでしょうし、それを無視するなら反論されるリスク、社会的に批判されるリスクはちゃんと負うべきです。
人権擁護委員が可動し始め、差別的表現を取り締まるにしても、それに怯えず表現の正当性を主張し続ける精神の方が、何の制約もなくダラダラと垂れ流すよりも良いものが生まれるのは歴史を見ても分る話です。自由を謳歌するには、それなりのリスクや責任を伴うのだという事を忘れるべきじゃないのでしょうね。

私が掲示板やこのブログでも皆さんに自由に意見を書いて貰えるようにしているのも、どんな批判、反論も受ける覚悟があるからです。そういう訳ですから、今回のこの意見にも意見があればご自由に書き込んで下さい。時間的、能力的な限界はありますが、出来る限り私も対応します。


長々と四日も掛けて書いてきましたが、以上が私の意見です。最後まで読んで下さった方、お疲れ様でした。





私も疲れた・・・・・・・
こうなるのが分っていたから書かなかったという説もあるんですけどね・・・・(苦笑)