最強の〜は?

ミリタリィーオタクを長年やっていると、周囲からよく聞かれる質問が「一番強い〜って何?」という質問なんです。
兵器という物は、戦場で戦う為の物であり、どれが一番強いのか?と言う疑問は至極当然の物だとも思うのですが・・・・・
しかし、この質問は非常に困ると言いますか、漠然としすぎた質問なんだよね。兵器という存在は、単純に言えば「道具」でしかないわけです。だから状況によって使い分ける必要が出てくるという事なんですよね。
もの凄く細い釘を打つのに、巨大な木槌を使う馬鹿は居ないでしょ?小さな細工をする時には、やはり道具も小さな物を使います。つまり、兵器であってもそう言う事なんですよね。歩兵が持つライフルも、威力や性能だけを考えれば、もっと強力なライフルを装備させる事は可能なのですが、強力になればライフル自体も大きく、重くなる可能性が高くなります。そして、予備の弾も大きく、重くなります。
これは携帯性が悪くなり、装備出来る弾の数が減るという事になります。
事実、第二次世界大戦で使用されていた歩兵銃の弾は、直径7.56㍉前後でしたが、今日は小口径高速弾が主流になり、直径は5.56㍉前後の物が主流になり一発の貫通力、射程距離は減少しています。しかし、一人の歩兵が携帯出来る弾数は遙かに多くなっており、総合的に考えると火力は向上しているわけです。

他にも、昨今兵器の世界もハイテクが様々な分野で入り込んできていますが、肝心な兵士がそれを使いこなせるか?と言う点も重要です。文字道理ハイテク兵器は、高度な技術が使われているわけで、正しく使いこなせれば従来の同じランクの兵器と比べても、最終的には低コストでより効果的な威力を発揮出来ますが、使いこなすのにもやはり技術が必要となります。

だから、先進国の歩兵一人が持つ戦闘力は、昔に比べると破格に上昇していますが、歩兵一人に掛かるコストも跳ね上がっていますし、教育内容・期間も破格に増えているわけなんですね。

これでは、今すぐ戦力を必要としている状況下にある場合、必ずしも先進諸国のハイテク兵器が有効とは言えないという事です。
その典型的な例としては、アフガニスタン戦争での北部同盟でしょう。北部同盟は、タリバン政権壊滅という立場にあった為、世界中の先進国から援助を受けて、それまででは考えられないような贅沢な戦争が出来るように成っていましたが、ソ連がT−72(まあ最新装備と言うにはナンですが、それでも北部同盟には超強力な装備)を北部同盟に提供しようと申し出ましたが、北部同盟側は整備する能力も、使いこなす技術もないし、タリバン側の戦車の性能を考えても必要がないとして、更に型遅れのT−55の援助を申し入れました。
つまり、北部同盟にとっては使いこなす事が出来ないT−72よりも、使い慣れたT−55の方が
あの時点では優れた、都合の良い兵器と言えたわけです。これは非常に妥当で適切な判断と言えます。
カタログデーターを見比べて「全ての数字が高いからこちらの方が優れている」なんて判断するのは間違いではありませんが、正しい判断であるとも言えない事が、この事でも分るでしょう。
一番肝心なのは「どういう状況下で、どういう物を相手にするのか?」これなんですよね。此処で初めてカタログデーターが参考になってくるわけです。
必要以上に高性能で、高価な装備を数少なく装備するぐらいなら、少々型遅れで性能が劣っていても、数が揃えられる方が有効な状況も幾らでも存在するという事です。

ですから、現時点で一番強い戦車は?と聞かれても容易に答える事など出来ないんですよ。
一番高性能な戦車は?と聞かれたら、答えられるかもしれませんが・・・・・。あんまり意味の無い質問ですけどね。