社会正義とは2

昨日も書いたけど、この社会正義と言う物はそもそも個人正義の延長線上にあるはずの物だったのが、長い年月の中で少しずつ変革していったのと、後に書く「国の正義」の影響もありその原形を止めないまでになっている。それどころか、これを個人基準として捉え「人として当然」などと思い込んでる人が多い。
分かりやすく例を挙げるとしよう。


「男A」と「女B」が作る家庭があったとしよう。Aは若くして事業が成功しており経済的には問題なし、3歳になる子供の面倒もよく見てくれるし、忙しい仕事の合間には家事も手伝ってくれる。正に理想的な夫と言えるのだが、このAは「風俗通い」と言う浮気癖があり、幾ら言っても繰り返すだけで治まる気配がない。そこで嫌気がさしたBは離婚という方法が思いつくが決心が付かない。そこでAとB共通の友人「男C」に相談を持ちかけるが、何時しかCとBは関係を結んでしまいその関係を1年にも渡って続けてしまう。所が仕事が予定外に速く終わったAが帰宅した時に一人で寝ている子供を見て不審に思い、それが切っ掛けでBとCの浮気を知ってしまう。と言う事でめでたく離婚となってしまった訳だが・・・・・ここで問題なのが3歳の子供の養育権と慰謝料を含めた経済的な問題。


Aの主張
浮気癖があると言っても本当に遊びであり、一人の女性と長く交際した事もなく風俗店にしか行っていない、しかも家計に負担が掛る程でもなくあくまで自分の小遣いの中で楽しんでいただけだ。
子供も基本的には心の底から大事に思っているし、休日も子供の為に多くの時間を割いてきたし、蔑ろにしていた訳ではないのでBに渡したくはない。環境的にも経済的に余裕があるのでベビーシッターを頼むなどすることが可能であり問題はない。
慰謝料に関しても全く払わないとは言わないが、Bは本当に浮気をしていたのであって、Bの要求する金額700万を満額で払う気にはなれないし、必要もない。


Bの主張
そもそも私が浮気をしてしまったのはAが幾ら頼んでも風俗通いを辞めなかったせいであり、Aが風俗通いを辞めてくれれば浮気をする事はなかった。それに浮気じゃないとか言っているが世間では十分浮気だ。
子供は当然私が引き取る。それに離婚が正式に成立すればCは独身であり自分の子供として育てても良いと言ってくれているので即座に結婚する予定。環境的にも私が引き取る方が理想的だ。
慰謝料は確かに私も浮気をしてしまったが、それはAが原因であり散々辞めるように注意したにもかかわらず風俗通いを辞めなかった間私が被った精神的苦痛を考えれば当然。それにCと結婚するので養育費は請求しないのに面会は認めるのだからその分としても払うのが当然。


ま〜本当に最近よく聞く?話なんだけど、法律的な問題はともかくとして、あなたは個人的に誰がどれぐらい悪いと思いますか?実に様々な意見があると思うけど、その悪と判断した基準は個人正義か、社会正義か認識出来ているだろうか?


○Aの自業自得・Bの意見は全て通る
○あの自業自得・しかしBにも悪いところはあるので、養育権はBに有るけど、慰謝料は減額
○あの自業自得・しかしBにも悪いところはあるので、養育権はBに無いけど、慰謝料は満額
○Bの方が悪い・Aの意見が全て通る
○両方の友人でありながら家庭を壊しAを裏切ったCが一番悪い。


大まかに分ければ上記のような感じだろうか?一番多い意見は「Aが全面的に悪いしBの意見が全て通る」と言うものだと思う。
この例題の場合、本当なら自分とはまるで関係の無い問題で、判断など下す必要もない話なんだが、こういう話をテレビで聞いたり、身近に起こったりすると多くの人が我が事のように考える物だ。
しかし多くの場合客観的な判断を下しているつもりで、どちらか一方に感情移入して、当事者のつもりで判断している場合が多いんだな。
Bは何度も何度もAに風俗通いを辞めるように頼んだにもかかわらず、全く辞める事もない状態を何年も我慢してきた。そう言う観点から見ると全ての要求が通って当然という判断になる。これは、明らかに個人正義の判断だと言える。生命の危機という程の物という訳じゃないけど、個人がより良く生きていこうとするのを破壊された訳だから「悪」の認定を下す事が出来る訳だ。
こうなるとBは完全に「悪」の存在と言えるのでBの言い分など全く聞く必要がないし、自分が浮気をしたのもストレス発散、より安定したパートナー探しという生活向上の為の「正義の行動」と言うことになる訳だ。
逆にBの言い分が全て通ると判断した人も、同じくBに感情移入した結果だと言える。
AやBのどちらかがより悪いとしても、どちらも悪い所はあるという判断はどちらかに偏った感情移入か、両方に感情移入をして、それぞれの言い分を吟味したという事なんだろうけど、個人判断をそれぞれに当てはめていると言える。
しかし、慰謝料をどれぐらい減額するか?と言う問題では個人判断と社会的な判断が入り交じってくる。Cと密会するのに子供を一人で留守番させたBの行動、1年間も不倫関係をずるずる続けている点などを考えて、個人判断で悪の行動と判断し今度は社会正義に照らし合わせて、過去に聞いたうわさ話や世間話、別件で支払われた慰謝料の額や、法律番組などで見聞きした情報など様々な個人経験以外で手に入れた情報で判断していると思う。これが社会正義の判断の典型だ。
しかしこの社会正義の元となる情報の入れ方自体も個人の判断で為になるとして記憶している物から聞き流した情報、聞くに値しないという判断等を瞬間的に行い仕入れているので、通常不完全である物が多い。

ー続くー