テロに関する考察その4

何故追い詰められてるはずの彼等が活発化する事が出来るのか?
それにはいくつかの理由がある訳なんだけど。


○大国に対する反感
○冷戦崩壊により、世界中で武器弾薬が余ってしまった。
○大口資金の流入が無くなった事で組織が揺らいだ。
○大国に押さえつけられていた小国の独立などで、情勢が混乱している。
ソ連崩壊による共産化の行き詰まり。
○組織の存在意義に対する疑問


大国に対する反感は、先に説明したとおりなんだけど、それ以外にも口では大きな事を言いながら、冷戦時代大国の飼い犬に成り下がってしまっていた、テロリストのリーダー達は多くが急速にその力を失い、冷戦時代異端視されていた武闘派達がそれに変わって台頭してきた。
冷戦崩壊で民族運動が活発化した背景にもこういう原因が垣間見えてくる。もちろん大国からの圧力が無くなったのが一番の原因なんだけど、金を使って組織を掌握してきたリーダーに金が無くなれば、実行力のあるリーダーに傾くのは自然の流れってものだしね。
武器は冷戦崩壊後、世界の多くの国が軍備を縮小しているんだけど、これが適正に処分されてるなら問題ない、ところが闇に消えちゃってる物がチラホラ・・・・・特にロシアは酷い状態にある。
あまり知られてないけど、火薬にも消費期限という物が存在するんだな。ソ連が崩壊した直後、当たり前なんだけど、それぞれの軍事工場は大国ソ連時代と同じペースで生産してた訳だ、ところがロシア政府が大幅に軍をリストラした為に、武器弾薬が大量に余ってしまった。
しかもそれぞれの工場が、いきなり自主採算制を取る事になってしまい、余った在庫を何とか自分達でさばいていかないと生き残れなくなってしまった訳だ。
それで冷戦崩壊後、それまで軍事機密の厚いベールに隠されていた兵器もお構いなしに世界中の軍隊に売り出す様になった訳なんだけど、そうそう売れない。
そこで相手が闇の武器商人だろうがテロリストだろうがお構いなしに売りまくってしまうと言う暴挙に出てしまった訳だ。
その結果、質の良いロシア製の火器が世界中にあふれ出した。それまでは中古や、模造品等も大量に混ざっていたテロリスト達の武器も、今ではちゃんとした工場で生産された純正品が多くなっている。

今回の学校立て籠もり事件も、そうしたロシア製兵器、爆薬がそのまま犯行に使われた訳で、正に因果応報とも言える皮肉な状態を生み出している訳だ。

豊富な武器と大国のタガが外れた独立気運、大国のテロリスト排除政策によって追い詰められた国際テロリスト達、こうした物が複雑に絡み合って現状の状態を生み出してるんだけど、その中で現在一番活発な活動を行っているのが「アル・カイダ」を初めとする「イスラム原理主義者」達のテログループと言う事になると思う。確かに最近のイラク情勢やイスラエルでのテロ、東南アジア、ロシアに吹き荒れているテロはイスラム原理主義者の教えを掲げるグループが関与しているか、直接的じゃないにしてもその背後にその存在が見え隠れする事が多い。
しかし、この原理主義者達が=テロリストと判断してしまって良い物なのか、これらのテログループを正しく理解するにはもう一度イスラム原理主義という物を理解し直す必要がある様だね。


そもそも一般的にイスラム原理主義と言われている運動は、コーランの教えをもう一度厳密に解釈し直して、預言者ムハンマド時代のイスラム共同体を実現していた時代の活気を取り戻そうと言う物だ。
しかし、ムスリムの宗教的・政治的な急進主義派、過激派を漠然と指す言葉として使われる事が多い訳なんだけど、そもそもこの呼称自体はイスラム教徒じゃない人が勝手に付けた物なんだよね。当のイスラム教徒達自身はこの運動を「イスラム復興運動」と呼ぶ事が多い。
じゃあ、どこからイスラム原理主義なんて言葉が出てきたか?本来は英語でイラン革命などのイスラム法シャリーアと呼ばれる物によって、統治の復活を唱えるイスラム教徒による運動を指した物で、アメリカなどでは「Islamic Fundamentalism」と表記している。それをそのまま日本語に訳したのが原理主義という言葉だ。
じゃあ、そのアメリカ人が勝手に付けた「原理主義」というこの言葉はどこから来たのか?それはキリスト教プロテスタントの中で聖書の絶対と千年王国の到来を固く信じるキリスト教原理主義を指す語(Fundamentalism)と言う物があって、それをそのままイスラム復興運動に転用している言葉にすぎないんだよね。
ここで勘違いして貰っては困るけど、イスラム復興運動は回顧主義的な側面はあるけど、あくまで現在社会にイスラムの正しい教えをもう一度当てはめ直そうという運動で、プロテスタント原理主義の様に科学技術の否定などを唱う本当の回顧主義とはまるで違う物だ。


だからこそ、ミサイルもバンバン使うんだけどね・・・・。


まあ、プロテスタント原理主義者達も、自分達の事を「福音派」と呼んでる様で「原理主義」の語はむしろ外部からのレッテルという状態にある。やはりテロリストみたいに見られるのが嫌なんだろうな(笑

しかし我々日本では、キリスト教なんてあんまり縁の無い人が多いしプロテスタント原理主義なんて言葉も知らない状態でマスコミや学者の口から「イスラム原理主義」という言葉は「テロ事件」とセットで繰り返し報道された。その結果日本人の頭の中では「イスラム原理主義=テロリスト」という図式が出来上がり、酷い人では「イスラム教徒=テロリスト」という人まで居るけど、これは大きな間違いなんだよね。
イスラム原理主義」として評価されている「ワッハーブ主義」を国是としている国にサウジアラビアがある訳なんだけど、この国は穏健派で親米アラブ国家の代表格でしょ?
つまり、イスラム原理主義者=テロリストと言う評価は明らかに誤った見方なんだな。
まあ、この誤った偏見は日本に限らず、多くの国でも大なり小なりあって、迷惑している人も多いんだよね。
しかし、この原理主義者の中から、多くの過激な武装集団を生み出してるのもあまた事実なんだけどね。
じゃあ、何故過激な思想が原理主義から多く出てくるか、それを正しく理解するにはそれはヨーロッパによる、中東の植民地支配の時代まで遡る必要が出てくる。

その5に続く